夜明け前

 真っ白な画面に日記を書く。

 今日一日の出来事を振り返って自分と向き合う時間、というわけではなく、今考えたことを瞬発力で書いている。

 これまでにも個人的に日記を書いたりしていたが、やはり誰かが見るものでないとなかなか続かない。誰かが見ていたら続くのかどうかは、これからわかるだろうけど。そもそも日記が少し苦手だ。一つ物事をとらえたらどんどん連想ゲームが楽しくなってしまう性質なので、最初の出発点であるそれの印象が大変に薄くなる。なので、私が書くこれは、日記というより随筆かもしれない。

 

 

 初夏の夜明け前の空気が好きだ。空気が澄んでいて、それでいて攻撃的でない。冬の空気は透き通っているが、体を通り抜けていく冷たさがある。それに比べてこの季節の空気は、ただ純粋であるような気がする。これから始まるその日が暖かいのか、暑いのか、それとも少し肌寒いのか、どうにもなりうる気配がある。コップの結露の味に似ている。

 ついに社会人になってしまった身では、その時間の空気を味わっていることにほとんど絶望しか覚えなくなってしまった。純粋な空気を純粋な気持ちで体に取り込めるのは、いったいいつになるだろうか。